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パーフェクト・ワールド・ハルⅤ-6

「榛名がオメガだって言う、それですか」 「榛名だけじゃねぇけどな。線の細い、可愛いって言われていたヤツが軒並み噂になってる。それが噂レベルで済まなくなる日が来るかもしれない」  それは、水城がどうのこうのと言うよりも、よほど嫌な話だ。榛名が苛々している原因の一端であることも間違いない。  ――知らないわけないだろ、俺も。  榛名は触れてほしくないだろうから、気付いていない振りをしていただけで、けれど、それだって、いつまでも続けていけないかも分からない。 「オメガかどうか確かめるって言いだす馬鹿が、この先いつ出てもおかしくねぇだろ」 「……」 「それなら、いっそのこと、会長様のお手付きのオメガだって思われた方が幸せかもしれねぇなぁと。思わなくもなかったんだが」 「やめてくださいよ、篠原さん」  尖った皓太の声に、篠原が肩を竦めた。本当にそうであればありかもしれないが、榛名にとって残酷なことに、そうではない。 「冗談だって、冗談。まぁ、半分くらいは、冗談じゃねぇけど。あまり依怙贔屓が過ぎると、そうなるってことだよ。特に今の状況は」  今の状況。明け透けに噂が蔓延る、今までとは違う学園の空気。 「それでおまけが、このミスコンだ。中間発表もまだだけど、あの新入生と成瀬の一騎打ちみたいだろ? それがまるで、現状と新勢力の一騎打ちみたいで嫌だって話だ」  そこで話が戻るのか、と。皓太はうんざりと首を振った。もし、いや、もし、ではないのかもしれないが。水城が頂点に立ったらこの学園は何か変わるのだろうか。こんなにも早く。あるいは、二年後、水城が生徒会長としてこの学園のトップに立ったらば。

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