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パーフェクト・ワールド・ハルⅥ-3

「折角だし、ここで飲んでいきなよ。たまには他の子とも交流しないと。高藤も心配してたよ?」 「あいつは本当にお節介だな」 「まぁまぁ、そう言わず。榛名ちゃんと仲良くなりたいって子もたくさんいるんだからさ。変な意味じゃなく」  にこりと愛想よく背後を示した荻原に悪意がないことも分かるが、こちらもまたお節介だ。フロア長や副フロア長に任命される人間は、皆こうなのだろうか。  けれど、面倒だと思うのは、不精だけではなく、その輪の中に苦手な顔があるからで。四谷時雨。中等部のころからずっと高藤に好意を寄せている彼は、する必要もないのに同室者である自分を目の敵にしているのだった。 「ほら。よっちゃんとひなちゃんは今さ、看板づくり頑張ってくれてるんだよ」  そんなわざとらしく持ち上げるようなことを言わなくとも。高藤目当てだと暴露していたのはおまえだろう、と。疑心が滲み出ていたのか、目配せを送られたが、「へぇ、そうなんだ。ありがとう」と言う顔を作り出せない。目線の攻防の末、折れたのはやはりと言うべきか荻原だった。 「でも、この忙しさからも、もうちょっとで解放されるね。榛名ちゃん、ゴールデンウィークはどうするの? 寮長も、もし帰るなら帰っても問題ないって言ってたけど」 「後半は出てこいとも言ってたけどな」 「俺は二日目に一日だけ帰ろうかなって思ってるよ、折角だし」  ほっとした顔で荻原が笑う。人好きのするそれをほんのわずか羨ましく思いながら、行人は手に持ったままだったカフェオレに口を付けた。

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