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パーフェクト・ワールド・ハルⅥ-8

「まぁ、気にするな。四谷のことなら荻原に任せておけ。あいつは人を懐柔するのが上手いからな。寮生委員にぴったりだろう。あいつも俺の推薦だ」  想定外に慰められてしまって、行人は俯いて表情を覆い隠した。こういう時に、どんな顔をすれば良いのか、いつも分からなくなってしまう。必要以上に構うこともなく、茅野は大股で階段を上っていく。 「もちろん、おまえの相方もな。寮生委員に選ばれるヤツはみんな良いヤツなんだ。俺を見たら分かるだろう」 「はぁ」 「つまるところ、モテるのは致し方ない。そのモテる男と同室なんだ。多少の嫉妬は諦めろ」  茅野に笑い飛ばされて、行人はぎこちない笑みを唇に浮かべた。中等部のころから、同室者のことでやっかまれたことは数えきれないほどある。それは、今更であると思うし、気の合わない人間と同室であることのストレスとを秤にかけても、たいしたことではないと判断できる。ただ。 「なんと言うか、俺にかこつけて、他のヤツまで馬鹿にされることが、気に喰わなかっただけで」 「はは、高藤が聞いたら泣いて喜びそうだな」  あっけらかんと応じて、茅野が会議室の鍵を開ける。行人たちが手を付けている書類の奥に、小ぶりの段ボール箱が増えている。茅野の言っていた「仕事」はこれか。

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