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パーフェクト・ワールド・ハルΦ-4

「ウチの寮生は良い子ばかりで、羽目を外し切っちゃいけない最後のラインは分かってるから、問題ないんだって」 「まぁ、そうかもだけど」 「あ、そうだ。行人。荻原も戻って来てるんだよな? 声かけてきてあげて」  不意に笑顔を向けられた所為ばかりではなく、行人は言葉に詰まった。 「え……、と。でも、疲れてる、かも」 「祥くん、俺が……」 「無理なら無理でも良いけどさ。自分に声がかかってなかったらショックだろ? だから、お願い」  皓太は外の方を手伝って、と。高藤の提案をさらりと受け流して、その背を促すようにして二人が階段を下りていく。一人廊下に取り残される形になって、行人は浮かせかけていた手を所在なく下した。 「と言うか、祥くんって、なんだ。祥くんって」  そりゃ、生まれたころから知っているだろう相手を、端から「成瀬さん」と呼んでいたとも、敬語で話していたとも思ってはいなかったけれど。  寂しくなるような気がするのは、自分が入り込めない距離感を見せつけられた気分に勝手になるからだ。普段、あの二人がそう言った態度を見せないから余計に。不意打ちで来ると、戸惑う。そう言うことだ。言い聞かせるように、内心で呟いて、行人は荻原の部屋の前に立った。  ノックをする直前、ほんの少し躊躇ってしまった。食堂での一件が、最後に喋ったタイミングで。荻原と喧嘩をしたわけではないのに、なんとなく気まずくて二人きりを避けていた。  ――気が付かれてたんだろうな、成瀬さんに。あるいは、茅野さんから成瀬さんに話がいっていたかのもしれないけど。  さすがに、最上級生の気遣いを、お節介とは切り捨てられない。  一つ小さく息を吐いて、行人はドアをノックした。

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