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パーフェクト・ワールド・ハルΦ-5

「あれ、榛名ちゃん」   目の前に現れた固い顔に、「どうしたの」との問いを呑み込んで、荻原はへらりと笑った。軽薄だとよく評されるそれで。 「てっきり、高藤かと思った。さっきすれ違ったから。高藤に聞いたの? 俺も戻って来てるって」 「いや、……うん、そう。それで」  気にしなくて良いのになぁ、と思いながら、荻原は笑って続きを促がした。真面目だなぁ、と再認するのが半分と、相変わらず生きるのが大変そうな子だなぁ、と。どこか微笑ましく感じるのが半分だ。 「茅野さんたちが中庭で花火するって言ってて。それで」 「誘いに来てくれたんだ、ありがとう」 「べつに、俺が、と言うか……」 「うん、でも、ありがとう」  駄目押しでにこりと微笑めば、榛名が居心地悪そうに、眉間に皺を寄せた。折角、可愛いのに。なんで、こんなに褒められ慣れないのかな。例えば、水城のような。四谷のような。あんな風にちやほやとされて学園生活を送る選択肢もこの子にはあっただろうに。  ――まぁ、それが出来ないから、榛名ちゃんなんだろうなぁ。  俺は、好きだけど。そう言うところも。苦笑を呑み込んで、荻原は続けた。 「俺、可愛い子はまんべんなく好きだけど、その中でも榛名ちゃんは好きだよ」 「……嬉しくねぇよ」 「いつもすごく頑張ってる感じがして、ずっと見てたんだ。それだけ」  困惑気味に瞳を瞬かせた小柄な彼に視線を合わせて、眉を下げる。

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