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パーフェクト・ワールド・ハルΦ-9

「それで? もう一人はどうした」 「あとで顔は出すって言ってた」 「……そっちも大丈夫だろうな」 「うん」  先ほどと全く同じ笑顔で頷いた同期から視線を外して、花火を囲んでいる健全な集団に声をかける。 「火の取り扱いだけは気を付けろよ。みささぎ祭の準備にかこつけて、許可を取り付けたんだからな」  率先して楽しんでみせているのは荻原だが、榛名も高藤もつられて笑っている。これもきっと想い出になるのだろうとの感慨を壊すように成瀬が笑った。 「なんか、茅野、お父さんみたいだな」 「その例えで言うと、おまえも俺の子どもになるのか。冗談じゃない」  可愛くない上に、手間のかかる手合いだ。想像して、茅野は頭を振った。 「一年や二年は可愛いが、おまえの面倒まで看てられん」 「はは、まぁ、俺も無理だな、それは」  向原にでも看てもらえ、と。言いかけた言葉をなんとはなしに呑み込んだ。いつか冗談ではなくなる日が来るのではないかと、気を揉んでいるのは自分だけではないだろう。いや、――万が一、実際、そうとなれば、俺は安心するのかもしれない。有り得ないことだとは思うが。  アルファとアルファだ。それもどちらも頭一つ飛びぬけるほど有能で、家柄も良い。子を成すことが、もっと平たく言えば、有能なアルファの種を残すことが、義務であるはずで。そう言った意味で、この学園にいる間だけは、家のことから解放される。この二人に限ったことではないが。  この学園の塀の中が、異質である理由の一つだ。 「行人」  何本かの花火を手に近づいてきた榛名に、成瀬が相好を崩した。どちらが保護者か分かったものではない。  ――だが。 「精神安定剤代わり、だろうがな」  俺が後輩を可愛がるのとは、色が違う。無論、本人に言うつもりもないが。呟きは、手持ち花火の爆ぜる音で消えていった。

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