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パーフェクト・ワールド・ハルⅦ-5
目星も付けていたのか、淡々と喋りながらも、四谷は筆を細かく動かしている。些細な色むらは、看板として飾られたらば、誰も気が付かないのではないかと思う。けれど、――それで割り切れないんだから、仕方ないよな。
他人から見れば些細なことに拘ってしまうところがあるのは、自分も同じだ。器用に動く手元をじっと追っていると、「なに」と訝しげな声を四谷が上げる。
「いや、……ごめん。すごいなと思って。下絵もすごく時間かかったんじゃないのか?」
「さっきも言った通り、俺の自己満の世界だからね。期限のあるものに、時間を過大にかけること自体、褒められたことでないのも分かってるから。それにどうせ、みささぎ祭のメインはミスコンだしね」
一息にそこまで話して、四谷が顔を上げた。
「イメージと違ったって顔してる。どうせ荻原が言ってたんでしょ、俺は高藤目当てだって」
にっと唇を釣り上げたかと思うと、四谷はまた模造紙に向かった。薄暗闇の中でも、それがどれだけ時間と根気をかけて練り上げられたものなのか分かる。自分には、芸術的なセンスなど皆無だけれど。それでも。
「まぁ、べつに否定はしないけどね」
「……」
「だって、どうせだったら、高藤に好かれたいし、気に入られたい。俺は素直だからね、そう言う意味では。いつだって、そう思ってるよ。当たり前でしょ」
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