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パーフェクト・ワールド・ハルⅦ-6
それだったら、あいつが見ているときだけ、真面目にやっているふりをすれば良いのに。揶揄を呑み込んで、行人は、四谷がやり終えた後方に回る。使用していた色がそのまま残されているパレッドと、人数分の絵筆。
「手伝う」
「だから要らないってば」
「うん、だから、もう使わないのとかあったら、片付けるのくらいは手伝う。洗うのだって、時間かかるだろ?」
もし、最後にもう一度見直して手を加えたいのならば、余計なお世話であるだろうけれど。訊くだけなら、タダだ。四谷は要らない親切であれば、断るだろうし。
「なら、全部終わってから、片付けるときに手伝ってくれる? まだどれ触るか分からないし」
図るように行人を見ていた四谷が、肩を竦めた。残るお許しは貰えたらしい。
「ジャイアンは、映画になると途端に良いヤツになる」
黙々と作業をしていた四谷が漏らしたそれに、行人は思わず首を傾げた。
「なんだ、それ」
「映画の中で、一つの目標に向かって一緒に立ち向かうときは、何故か普段は嫌なヤツなジャイアンが良いヤツに見えるって言う、アレ」
突如出てきた名称は、国民的アニメのキャラクターだ。
「まさに、今の榛名であり、俺」
四谷が手を止めて、悪戯に目を細める。そして、ふと真顔になった。
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