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パーフェクト・ワールド・エンド13-3

「分かってます」 「意味のないオーバードーズをするようなことはきみならしない。ちゃんと正確に管理できるってね」 「だから」  できている。問題はない。言いつのろうとした言葉の無意味さに気づいて、隠しきれていない苛立ちに、溜息を吐かれたのが分かった。大人に諭されることを成瀬が厭っていると知っていて、その態度を崩さないのだから性質が悪い。少なくとも成瀬はそう思っている。  信用のできる人間はいない。利用できるか、できないか。それだけだと思い込んでいた。 「それができなくなっているというのなら、問題だ」 「分かっています」 「分かっているのなら」  呆れた声が、繰り返す。 「一度、うちに来なさい」 「……」 「授業が終わってからでいいから。ちゃんと外出許可を取って、診療を受けなさい。そうでないと渡せない」  できることなら、行きたくはなかった。今のこの状態の学園で、いつもと違う行動をとりたくはない。けれど、それはあくまで自分の都合だと言うことも理解している。  手元の残りを思い返しても、早いうちに補充すべきであることは明らかで。自分に選択肢が残されていないことも理解せざるを得なくて、「分かりました」と応じて通話を切る。  ――そもそも論で言えば、薬なんて飲まないに越したことはないんだよ。  昔、何度も聞いた話だった。その選択を自分が取らないと分かっていてなお、彼は繰り返し説いた。それが正しい選択なのだと静かに主張する声が成瀬は嫌いだった。

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