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パーフェクト・ワールド・エンド13-5

 今のきみはそんな感情を自分が持つなんて想像もしていないかもしれない。でもだからこそ知っておいてほしい。  続いた言葉の真摯さに、笑い飛ばすことはやめて黙って続きを聞いた。くだらないと思っていたけれど。けれどこの話が終われば、陵の入学許可が下りるのだと思えば、我慢はできた。  ――特定の誰かに特別な感情を持つことは、素晴らしいことだ。けれど同時に理性を上回る感情と言うものは時として凶器にもなる。  それはそうだろうと思った。同時に、自分がそんな感情を持つことはないとも思っていた。表面上はどうとでも取り繕える。けれど、成瀬はアルファが嫌いだった。憎んでいたと言ってもいいくらいに。  ――そして、その感情は人間を強くもするし、弱くもする。  だからくだらないんだ、そんなもの。そう笑う代わりに、真面目な顔で頷いた。優等生然としたそれで。アルファに縋りつかなければ生きていけないと言う甘えた顔のオメガも同じくらいに成瀬は嫌いだった。自分の意思で生きていかないで済む言い訳のようだとさえ思っていた。「つがい」だなんて馬鹿げた仕組みは。  ――つまり、少し前の話に戻るわけだけど。感情のコントロールを難しくさせるんだ。誰かを好きだと思う心も触れたいと思う欲望も自然なものだ。けれど、フェロモンのバランスも大きく引きずられる。  でしょうね、と相槌を打った。だから馬鹿なんだと呆れながら。  ――オメガだと露見する可能性が跳ね上がる、というわけだ。  危ない橋ですね、と成瀬はただ応じた。そんな橋を自分が渡るわけがないと思っていたが言わなかった。説教が長くなるだけだ。彼はまた困ったように微笑んでから、言葉をついだ。  ――逆に、もしきみが――。

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