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パーフェクト・ワールド・ハルⅦ-13
「榛名くんは、出なくて良かったの?」
それが何を指しているのかは、すぐに分かって、けれど、聞きたくないと思った。
「ほら、僕と一緒に出ようって言う話、あったでしょ。それがいつの間にか、消えちゃったから」
「……ねぇよ」
「え? なぁに、榛名くん」
水城が申し訳なさそうに首を傾げる。同族嫌悪、なのだろうか。分からない。ただ、その笑顔も、声も、行人には不快感しか与えない。情緒が荒れるのは、もしかすると、――あてられているのかもしれない、とふと思い付いた。行人が薬を飲んで、抑えて消しているオメガのフェロモンを、水城春弥は無防備に振り撒いている。その香りに、乱されているのかもしれない。体内のリズムが崩れて、精神が荒れるように。
――でも、だとすれば、それは、水城の所為だ。隠すべきをひけらかす、異分子の。
「誰も彼もが、おまえみたいに目立ちたいわけでも、ちやほやされたいわけでもねぇんだよ」
心の淀みが、そのまま棘にすり替わったような声になった。水城の瞳が大きく見開かれ、しん、と場が静まり返る。刺さるような視線は、水城たちの方ばかりからでもなく、――四谷。折角、少し話せるようになったのに。もう嫌味も言ってもらえないかもしれないと思ったけれど、続きは喉からするりと滑り落ちた。
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