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パーフェクト・ワールド・ハルⅦ-14

「あれに喜んで出る奴の、気が知れねぇ」  水城の少女めいた瞳にじんわりと水面が広がっていく。 「っ、……ごめんね? 僕、ただ……」  言葉を詰まらせて俯いた水城を庇うように、取り巻きの二人が前に出た。揉め事を大きくするわけには行かないとも分かっているのに、見失った引き際を取り戻せない。爆発しそうな均衡の際で、ぼす、と頭に衝撃が走った。 「こら、言い過ぎ、榛名」  上から思い切り頭を押さえつけられているから顔は見えなかったけれど、声だけで誰だかなんてすぐに分かった。水城たちが見えなくなって、視界が高藤だけになる。走ってきたのか、珍しく声が荒い。 「ごめんな、水城。こいつ口が悪くて。水城だって、頼まれたから出てるだけなのに。――おまえだって、ウチの寮じゃなかったら、断り切れずに選出されていたに決まってるんだし。分かるだろ? そう言う状況も」  視界を遮るように前に立っていた高藤が、呆れ気味に振り返る。 「あと、おまえのさっきの暴言、おまえの大好きな成瀬さんにも、ぐっさり刺さってるからな。好き好んで出てるのはあの人だぞ」  誰かが、「確かに」と笑った声で、行人は我に返った。 「いや、違うし! そう言う意味じゃなくて。と言うか、成瀬さんは、どんなことしてても格好良いし、素敵だし、綺麗だし」  わたわたと身振り手振り付きで弁明し始めた行人に、ふっと四谷が笑った。 「まぁた、始まった。榛名の成瀬先輩大好き話」  その声に、思わず振り返れば、四谷が仕方ないと言わんばかりに肩を竦めていて。呼応するように、ぎこちない笑みが背後で広がっていく。

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