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パーフェクト・ワールド・ハルⅦ-15
「本当、悪い。ごめんな、水城。こいつ、この通り、成瀬さんのこと大好きで。そんなわけで、その成瀬さんにみささぎ祭のエントリー押し付ける形になって罪悪感が凄まじいらしいんだよね。それで、その話になると、いつもこうなんだ」
「なんだよ、それ。ただの八つ当たりかよ」
「そうそう、八つ当たり。だから、ごめんな」
納得いかない顔の取り巻きに、高藤がさらりと首肯してみせる。毒気を抜かれた調子の同級生の腕を、水城がいじらしく引いた。
「大丈夫だから。怒らないで?」
「ハルちゃんこそ、怒って良いのに。本当に良いの?」
ほんの僅か、困ったように表情を揺らして、水城が頷いた。
「うん。もちろん」
その応えに、高藤が畳み込んで微笑んだ。行人もあまり見たことがない類の愛想の良さで。
「本当にごめんね。ありがとう、水城。ついでに申し訳ないんだけど、ちょっと次の進行の準備があるから、榛名、連れていくね」
言葉通り腕を掴まれて、行人は立ち上がった。
「なんだかんだで実行委員の仕事、忙しくて。ごめんね、こいつも一応、委員だから」
行人と違って、普段の高藤は不愛想と言うわけではないが、笑顔を振りまくようなタイプでもない。淡々としていて、感情の起伏が少ない。感情の沸点も高い分、基本的に声を荒げるようなことも、ない。でも、これは、怒ってる、な。
今の今まで自分が苛立っていたことを棚に上げて、行人はちらりと硬質な横顔を窺った。普段よりずっと足早な歩調に合わせて早めながら、その苛立ちが収まってきていることにやっと気が付いた。
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