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パーフェクト・ワールド・エンド13-7

 同時に、自分がどうのこうのと言う資格がないことも分かっている。  ――それなのに、なんであんな弱音みたいなこと言ったんだろうな。  あの夜を思い出すと、居た堪れない。最後まで突き放さなかった向原の静かな声を含めて。  一度零れ落ちた言葉は取り繕えない。それも分かっているからこそ、発言には気をつけているつもりだった。  昔の自分だったら言うはずのなかったものだ。あんな、甘えるようなこと。わざと弱さを見せて甘やかされることを期待するような、みっともないこと。  弱くなったと思った。自分の欲しい言葉を与えてくれる温いぬくもりに甘え過ぎていたと思い知った。それはね、としたり顔で今から会う人間が言いそうな説法が頭によぎってうんざりとした。  それはね、弱くなったんじゃない。誰かを頼るということを覚えたんだ。弱いところを見せることができると言うのは、強い証拠だ。  似たようなことを行人に言った。同じ知った顔で。そう昔の話ではない。あれが嘘だったわけではない。その道を選べるのなら、あの子にとって一番いいだろうと思ったのは事実だ。あの少年に出逢って初めて本心でオメガのことを慮れた。  幸せになってほしいと考えたときに浮かんだのは、かつて自分が何度も説かれ、蔑ろにしてきた言葉ばかりだった。  そういう意味では、正しかったのだろうと知っている。あの人の言うことが。けれど、自分はその選択を取らない。そこまで理解しても、意思は変わらなかった。  ひとりで生きていく。そのための力をつける。そうして今までも生きてきた。これからも。  だから、誰も好きになんてならない。

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