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パーフェクト・ワールド・エンド13-10
「僕はね、最初、きみが全寮制の学園に通うだなんて自殺行為だと思った。それで、――たぶん良識ある大人として物を申すなら止めてあげるべきだとも思っていた。でもね」
「でも、なんですか」
「ひとつだけきみにとってのメリットがあると思っていたんだ」
メリット。その言葉をゆっくりとかみ砕く。おそらく、陵学園に入学する前の自分が思っていたことは一つだった。有望なアルファの集まる学園でトップを取れば、自分が「本物」になれるような気がしていたのだ。
そんな幼い幻想を、たしかに抱いていた。もう、六年近く前の話だ。
けれど、続いた言葉は成瀬が昔に考えていたものとはまったく違うものだった。
「きみが少なくとも物理的に璃子さんから離れられる」
「……それは」
「その六年のあいだにきみが変わるような出会いがあればいい。見せかけだけじゃなく、本当の意味で強くなったらいい。そうであれば、戦える」
いったいなにと戦うと言うんだ。胸のうちでだけ反論する。その内心も分かっていたのか、彼は小さく溜息を吐いた。
「そう思ったから、最終的に太鼓判を押してみせたんだ。それなのに、きみはどうだ」
「……」
「昔の、陵に入学する前のきみも、今と変わらずにこにことしていて穏やかで優しかった。けれどそれはすべて表面上だけで、内心ではこの世界の不条理をひどく憎んでいただろう」
あの学園にいる人間が聞いたら、一様に信じられないと思うだろうことを告げられて、「否定はしませんけど」とおざなりに肯定する。
事実だ。アルファもオメガも、大嫌いだった。そして第二の性にすべてを左右されるような社会の構図も。
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