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パーフェクト・ワールド・エンド13-11

「それが、陵に入ってアルファの子たちと交わるなかで、少しずつ変わっていったように僕には見えていた。きみが口先だけで唱えていた性善説が、本物に見えるくらいに」 「そう、ですか」 「そうなんだよ。アルファはきみにとって憎いだけのものではなかっただろう」  頑なに否定するのも馬鹿らしくて頷く。そしてそれはこの男の言うように、陵で過ごしたからこそ思うことができるようになったことだった。 「当たり前だ。アルファもアルファである前に人間だ。きみがオメガである前に人間で、みなと同じく平等であるようにね」 「それはそう思いますよ、本当に」 「うん。だから良かったと思っていたんだ。きみがそういうふうに思えるようになったことは良かった。だから行かせて良かったと思っていたよ」  良かったと三度も繰り返してから、芝居がかった仕草で眉を下げる。その顔を正面から見つめたまま、成瀬は表情を消した。オメガではないから。赤の他人だから。言えるだけの説教だ。すべて聞き流せばいい。 「そう思っていたのに、また逆戻りだ」 「そうですか」  気のない相槌に呆れるでもなく、滾々と言葉が続く。幼い子どもに言い聞かせる調子に、苛立ちがわずかに溜まり出す。 「僕が言う義理はないと分かっているから、ただのお節介だ。でもね、祥平くん。あえて聞くよ。きみは来年、どこでなにをしているつもりなんだ?」 「言う義理がないなら、答える義理もないでしょう」 「それはそうだと思うけどね、老婆心だよ。祥平くん。きみの人生は、陵を卒業するところまでがゴールじゃないだろう」  それはそうだろう。当たり前だ。けれど、そうではない。  「そこから先に、無限の可能性が広がっている。違うか?」  まっすぐに諭されて、溜息を呑み込む。なんだかひどく馬鹿らしかった。なんでこんな馬鹿げたものを聞かなければならないのか。苛立ちも呑み込んで、答えにはなっていない言葉を発した。 「あなたに会うのは好きではないですが、あそこが異質な箱庭だと再認識できるので嫌いではありません」 「箱庭? 陵のことかい?」 「大人のいない、アルファもオメガもない、子どもだけの世界」  首を傾げた大人に、成瀬は言い切った。 「それが、俺がつくった箱庭です」

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