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パーフェクト・ワールド・エンド13-12

 陵学園の中等部に入学した当時、あそこは荒れていた。どこがお坊ちゃんの集まる由緒正しい全寮制の学園だ。そう思ったのが、偽らざる第一印象だった。それを、時間をかけて正した。そうして、つくった。  成瀬をじっくりと観察するように見つめたあと、静かに彼が言った。 「きみは、王にでもなってみたかったのか?」 「さぁ」  投げやりに成瀬は笑った。 「俺よりすごいはずのアルファを何人も踏み潰した上に座るんですよ、オメガであるところの俺が。自尊心を満たすにはちょうど良かったんじゃないですか」 「きみは良くも悪くもそこまで振り切れていないじゃないか」  振り切ったら楽だろうにねぇ、と笑って、それとも、と彼が声を落とした。 「その世界を、提供してあげたい誰かがいたのかい?」 「まさか」  浮かびかけた顔を打ち消して、続ける。 「俺はそんなできた人間じゃありませんよ」  そうだ。俺はそんな善良な人間じゃない。オメガやアルファのために、今の学園を作り上げたわけじゃない。 「ぜんぶ俺のためで、俺の勝手です」  俺は、あいつとは違う。あの男のような優しさは、最後まで持つことができなかった。  人のうわべしか見ない人間は、自分のことを優しいと言う。向原のことを冷たいと言う。けれどそうではない。そうではないことを成瀬は知っているし、自分たちに近しい――篠原や茅野も、まちがいなく逆だと言うはずだ。  優しいのも、周囲のことを本当の意味で気にかけているのも、向原だと。  ――逆に。    ふと、以前に聞いた説教の続きを思い出した。  逆に、もしきみがオメガであることを受け入れることができるときがきたのなら、恋をするべきだ。  とびきり上等な、きみを愛してくれるアルファにね。  それがオメガとしての一番の幸せだと僕は思う。医者としてだけではなく、きみを幼いころから見守っている大人のひとりとして、そう思っている。  何度でも言う。きみときみのお母さんがしようとしていることは、ひどく無謀で歪なことだよ。自然に逆らうと言うことは、それだけの無理をすると言うことだ。

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