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パーフェクト・ワールド・エンド14-6
「なんだったの、下」
寮室に戻るなり榛名に問いかけられて、皓太は用意していた答えを口にする。
「たいしたことじゃなかった。すぐに茅野さんが来て落ち着いたし」
「そっか」
茅野の名前に安心したのか、思っていたよりも簡単に榛名は退いた。なんだかんだで寮長である茅野に懐いている。
「そういえば、おまえ知ってる?」
「知ってるって、なにが」
もう課題は終わったのか、榛名が参考書を閉じる。自分の勉強机の椅子を引いて、腰かける。こんなふうに世間話をしていると、少し前に戻ったようでほっとする。
――最近は、またちょっとピリピリしてたからな。
それもまた仕方のないことではあったのだけれど。
「秘密の薔薇結社」
「あぁ」
それか、と皓太は苦笑いのまま応じた。
「なかなかすごい名前だよね。大正ロマン感があるというか」
「水城だろ」
淡々と切り返されて、「まぁ、そうだけど」と認める。べつに隠したかったわけではないが、取り立てて話題にしたかったことではない。
「榛名はどこで聞いたの、それ」
「……普通に生活してたら耳に入るだろ。そのレベル」
「おまえ、昔はぜんぜん噂話なんて気にしてなかったくせに」
「はぐらかすなよ」
わずかに苛立った調子に、早々に白旗を上げる。「べつにはぐらかしてたわけじゃないんだけど」
それも事実ではある。
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