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パーフェクト・ワールド・エンド15-3
ある意味では、いかにもアルファらしい。そしてそれは、成瀬自身の纏う殻にも酷似していた。
「誤解のないように言っておくわね。あの子が私のことをどう言っているのかの想像は付くけれど、私は私なりに可愛がっているし大事にしているつもりよ」
「まぁ、そうでしょうね」
否定はしないが、息子としてと言うよりは、自分の価値を上げるためのアクセサリーに近い感覚だろう。
自分にとって有益であるあいだは、手を引くつもりもないのだろうということも、向原には分かる気がした。
「だから、最善をおぜん立てしてあげたいのよ」
にこりとほほえむ顔は、この世界の頂点に立つことに慣れたアルファのものだった。
「それで、いつまで隠れてるつもりだよ、おまえ」
見送り終えてひとりになったところで、向原は背後を振り返った。あの女が気が付いていたかどうかは知らないが、向原はこの場所で立ち止まったときから分かっていた。
「成瀬」
駄目押しで呼びかけると、かすかに土を踏む音がした。
「べつに立ち聞きしてたわけじゃないけど。会いたくなかったから」
木の陰から出てきた成瀬は、動揺の欠片もない顔で笑っていた。諍いを起こしていたこともすべてなかったような調子で、穏やかに続ける。
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