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パーフェクト・ワールド・エンド15-6

「対策取られる前に先手打ちに来るんだ。当然だろ」 「それも分かってるんだけどな。まぁた説教されただけだったし」 「それで? なんでそれを俺に言うんだよ」 「いや。ここまで来て言わない方が卑怯かと思って」  なんでもないように答えてみせた声のトーンがふと下がった。 「それこそ、今更か」  目と鼻の先に、櫻寮の門灯が見えていた。まだ一階も明るい。皓太はともかく、茅野は待ち構えているのだろう。気苦労が絶えないなと思うと、少しばかり気の毒になる。あれがいたおかげで防げた騒動は数えきれない。  成瀬の足が止まる。けれど、振り向きはしなかった。 「前にも言ったかもしれないけど」  普通を取り繕った声だった。 「おまえには感謝してる。でも、おまえのそばに居たくない。これ以上弱くなりたくない。俺は俺のままでいたい」 「そうか」 「馬鹿だって思われようとも、やっぱり俺にはこれしかない」

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