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パーフェクト・ワールド・エンド15-8
「成瀬、おまえな。こんなに遅くなるなら、家に戻れ」
「悪かったって。ギリギリだったかもしれないけど門限内で帰ってきてるから」
だから大目に見ろと茅野に強請っている横顔は、いっそ清々しいほどにいつも通りだった。
「お。なんだ、向原も戻ったのか」
その声に形だけ頷いて、すり抜ける。追いやったのか、残っているのは茅野ひとりだけだった。
――どう言い含めたとしても、明日には、ほかの寮にも噂は広がってるだろうけどな。
どの程度の尾ひれと信ぴょう性が付くかは知らないが。
「どうだ? 無事にお帰り頂けたか」
「そいつに聞けよ」
面倒になってきておざなりに応じると、茅野が「なんだ、タイミングの悪いやつらだな」と肩をすくめた。
「本当におまえたちは、間が良いと言うか悪いと言うか。タイミングが良すぎると言うか悪すぎると言うか」
「一緒だろ、それ」
呆れたように笑った成瀬が、茅野の袖を引いたのが見えた。
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