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パーフェクト・ワールド・エンド15-10

「……馬鹿だな」  本当に馬鹿だと、思う。それなのに、なんで自分はその馬鹿に肩入れをしてしまったのか。  その理由のすべてを向原は理解しているから、より一層、馬鹿らしく感じるのだ。  最上階まで上り切ったところで、向原は近づいてきた足音に反応して振り返った。 「お帰り、向原さん」  早かったねと笑う顔に、向原は静かに呼びかけた。 「皓太」 「良かったね。早々に戻れて。おば……じゃないや。璃子さん、話長いから」 「まぁ、そうかもな」 「向原さんは適当に受け流せるかもしれないけど。そうじゃない人も多いから」 「おまえはできるだろ」 「あぁ、まぁ、多少は慣れてはいるから。でも、肝心の祥くんがね、本人は受け流せてるつもりなんだろうけど、受け流せないから」  黙って見つめ返すと、曖昧に微笑む。婉曲的に主張を押し付けてくるそれに、向原も小さく息を吐いた。  そういうところが、誰にとは言わないが、よく似ている。 「向原さんは知ってるだろうけど」

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