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パーフェクト・ワールド・エンド15-12
「向原さんなら、なんとでもできたんじゃないの。全部」
「言いたいことは、それで全部か」
挑発する物言いに反応することなく、淡々と告げる。その態度に、諦めたように皓太の肩から力が抜けたのが分かった。
「俺がなに言っても響かないだろうなとは分かってたけど」
「そうか」
「昔からそうだもんね。向原さんが聞くのは祥くんの言うことだけだったし」
「……」
「祥くんが言うこと聞くのも、向原さんの言うことだけだったし」
どこか懐かしむように笑う。そんなわけがない。分かり切っていることだからこそ、より一層の馬鹿らしさが募った。
皓太がなにを思い出しているのかも想像は付いた。昔の話だ。まだ昔、この子どもが本当に子どもだったころ、学園の外でも同じ時間を過ごしていたころ。
あのころだったら、もしかすると、そういう空気は残っていたかもしれない。けれど、すべては過去の話だ。
成瀬は、もうあのころとは違う。
「だから、そういうことだって分かってる。分かってて、それでも一言言いたかっただけ」
最後は自分自身に言い聞かせる調子で言い切って、背を向ける。向原もいい加減部屋に戻ろうと足を踏み出した瞬間。声が届いた。
「向原さんがそうなのと同じで、俺も俺で大事なんだよ。榛名が」
言うか言うまいか最後まで迷っていたらしいそれに、振り向かないまま向原は口元だけで笑った。
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