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パーフェクト・ワールド・エンド16-1

[16]  過信していたのだと思う。この学園の平穏を。あるいは、この学園における王者の絶対を。 「朝の寮の食堂もどうかと思ったけど、それにもましてあれだね」  行人の前の席に腰かけた四谷が、そっと苦笑気味に囁いた。授業が始まる前の教室はいつもそれなりに騒がしいが、今朝のそれは雰囲気が少し違っている。 「高藤、なにか言ってた?」 「なにかって……」 「昨日の夜の話」  声を潜めたまま続けられて、行人はわずかに首を傾げた。寮の食堂も、言われてみれば騒めいていたような気もするが、最近の自分に向けられる視線は煩わしいものが多かったから、取り立てて妙だとは考えなかったのだ。 「茅野さんがすぐにおさめたって聞いたけど。違ったのか?」 「まぁ、間違ってはないけど。来てたんだよ、成瀬璃子。会長のお母さん」 「え?」  予想していなかった名前に眉をひそめると、四谷がなんだと小さく笑った。 「過保護だね、高藤も。どうせすぐにバレるのに言わなかったんだ」 「どういうことだよ、来てたって。というか、普通、寮の中にまで入れないだろ」 「それができるのが、あの家なんでしょ」  呆れたように言った四谷が、ちらりと固まっているクラスメイトの輪に視線を投げる。 「茅野先輩が一応、箝口令を敷いてたけど。まぁ、意味ないよね」

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