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パーフェクト・ワールド・エンド16-2

「箝口令って、その、成瀬さんのお母さんが来てたって話か?」  言いふらすような話では確かにないだろうが、そうかと言って頑なに隠すような話でもない。そんな疑問符が行人の頭上に浮いていたのか、四谷が「うーん」と言いよどんだ。  悩むくらいなら言うなよと思ったのも顔に出ていたのか、四谷が困ったように笑ってから、さらに声を潜めた。 「そのお母さんが、意味深なこと言ってたんだよ。向原先輩に」 「意味深?」 「意味深というか、それ以外に言いようがないんだけど。まぁ、会長も冗談なのか本気なのかよく分からないこと笑顔で言うタイプだけど、その上を行く意味の分からなさだったというか」 「四谷もいたのか、その場に」 「たまたま一階にいたんだよ。そうしたら、いきなり派手なご登場だったから俺も驚いたんだけど。それで」  一度言葉を区切って、四谷が顔を近づけた。先ほどよりもさらに小さい声が告げる。 「うちの子、もらってくれないかしらって」 「――え?」 「そう、言ったんだよ。向原先輩に」  四谷の言った言葉の意味は、すぐに理解できなかった。しばらくして沸き起こったのは、怒りというより戸惑いに近かった。

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