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パーフェクト・ワールド・エンド16-4
「ちょっと待って。ちょっと待って。どこ行くの。もう授業始まるんだけど?」
「成瀬さんのところ、行こうかと思って」
渋々座り直して告げた行人に、「だから授業始まるってば」と四谷が小声でどやしつける。
「それに! 会長のクラスとか、三年のアルファの巣窟なんだから、むやみに近づくとか馬鹿でしかないでしょ」
「いや、むやみのつもりじゃ」
「寮に帰ったら会えるにもかかわらず、今ここで動こうとするのは十分むやみ!」
高藤にもだけど、会長にも迷惑かかるよと脅すように付け足されて、行人は閉口した。
「そもそも、急にどうしたの。会長も、今いきなり榛名に押しかけられて、あれこれ教室で聞かれたら困ると思うよ?」
「それは、……まぁ、そうかもしれない、けど」
「そうなの。それともなに。放課後まで待てないようなことだったの?」
いや、と否定しようとしたところで、教室のドアが開いて教師が入ってきた。そしてチャイムが鳴る。物理的に行動を遮断されて、行人は眉間に皴を寄せたまま、教科書を取り出した。
行人の肩をひとつ叩いて、四谷も席に戻っていく。その背を見送って、そっと溜息を吐いた。
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