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パーフェクト・ワールド・エンド16-5

 言われなくても、わかっている。自分が今、あの人に会いに行く理由は一つもない。ただ、想像してしまっただけだ。  ――もし、本当にあの人がアルファだったら。  腹は立っただろうけれど、馬鹿な噂だと一蹴できただろうし、あの人も歯牙にもかけなかったはずだ。  ――でも、そうじゃない。  わかっている。そうであっても、あの人は、気にも留めない顔をしているだろうことを。  けれど、表面上はそうであったとしても、内面も同じであるとは限らない。なにを考えているかなんて行人にはわからないし、想像にも限界はある。  ただ。  ――俺は、違うけど、でも、ある意味であの人と同じだから。  そう、だから、と思う。だから、高藤や向原に想像のつかないところを覗くことはできる。  あの夜、行人は自分のなかで抑えきれなかった不安を、同室者にぶつけた。最近のこの学園に蔓延る悪感情について、だ。  悪感情と言うと、語弊はあるかもしれない。行人は良いものだと思っていないが、水城を心棒する連中からすれば、「悪感情」などではなく「正しいもの」であるだろうと思うからだ。  行人が「秘密の薔薇結社」という同好会の存在を知ったのは、他のクラスのアルファの生徒に言われたからだった。

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