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パーフェクト・ワールド・エンド16-6
――知ってるか? ハルちゃんがつくった同好会。ハルちゃんが認めたアルファしか会員になれねぇんだけど、おまえだったら入れてもらえるかもな。
答えない行人に構うことなく、そいつは続けた。
――だって、おまえオメガなんだろ? 「秘密の薔薇結社」は、この学園のアルファとオメガのための集まりなんだよ。アルファとベータが対等なわけがない。その当たり前を、忘れるところだったよ。中等部に入学してからの三年間で。
それを思い出させてくれたのが、ハルちゃんだよ。
聞いてもいないことをしたり顔で囁いて、最後にそいつは笑った。行人の大嫌いな、高慢なアルファのそれで。
――だからおまえも、いつまでもつまらない意地張ってないで、こっちに来いよ。
そうしたらきっと楽になる。その台詞を聞いたとき、殴ってやろうかと思った。昔だったら、その後のことはなにも考えないで手を出していたに違いない。けれど、行人は選ばなかった。
自分が勝手なことをすれば誰に迷惑がかかるのか、わかるようになった。三年前とは違い、大切な人たちができた。だからこの学園が好きになった。そして同時に、その輪を乱すかもしれない自身のオメガ性がますます嫌になった。
――大丈夫。行人はここにいていい。
そう、慰めてくれたとき。あの人はどんな気持ちだったのだろう。
今この学園は過渡期なんだよと言っていたのは、「秘密の薔薇結社」の集まりに混ぜてもらったと興奮気味に話していたクラスメイトだ。
集団の中で変化が生じるのは当たり前なのかもしれない。けれど、行人は変わりたくはなかった。
あの人がつくりあげたこの学園を守り継いでいきたかった。
高藤をその自分の願う我儘に巻き込んでいることもまた、わかっていたけれど。
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