447 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンド16-8
席に座るなり、書類の整理を再開した篠原が、「それで?」と声だけで続きを促した。
「どっちに用があったのか知らねぇけど、どうした? 皓太なら教室に行ったほうがって、……水城いるし嫌だわな、おまえは」
「いや、まぁ、嫌は嫌ですけど。べつに」
「成瀬は、ほらあれだ。あいつ結構ふらっと姿消すから」
だから今日はいないとあっさりと言われて、行人は首を捻った。
「え? 朝から?」
「あいつ、結構さぼってるぞ。よくある、よくある。まぁ、今はなぁ、気持ちは分からなくはないから、あんまりうるさくは言いたくねぇけど」
はぁと行人は曖昧に相槌を打った。そういえば、高藤も似たようなことを言っていた。
よくひとりでふらりといなくなる、だとか。人気のないところを探すのが抜群に上手くて、そういうところに隠れてるけど、おまえは行くなよ、だとか。
「ま、放課後には出てくると思うから、それくらいにまた来るか? それか夜に寮の部屋に行くか」
「ですよね」
「同じ寮なんだから、それが一番確実だろ。夜まで待てない話だったのか?」
「……いや」
「安心しろ。妙な噂が頻発してる場所がどこかってなったら、おまえら一年の棟だ。俺らのところじゃない」
どこまで承知しているのか分からなくて言葉を濁した行人に、視線を上げないまま篠原が苦く笑った。
「それに、今までそんな噂が一度も立たなかったと思うか? おまえが入学する前はもっとえげつなかったぞ。俺らが中等部の一年、二年だったころは」
ともだちにシェアしよう!