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パーフェクト・ワールド・エンド16-9

「荒れてたんでしたっけ」 「成瀬が一番上に立ってる姿しか知らないおまえには想像できないくらいにはな」  書類の束を繰りながら、あっさりと篠原は言った。慣れているだけかもしれないが、処理の速度は行人が想定しているそれと桁違いだった。  ――榛名は高藤とは違うんだから。高藤の「大丈夫」を真に受けて軽く考えてたら、えらいことになると思うよ。寮生委員会の仕事。  四谷に言われたことだ。そのときも、そうだったと行人は改めて思ったのだった。アルファは、優れている。アルファは、自分とは違う。  それでも、あの人は、そのアルファたちの上に立っていた。行人が知る限り、もう何年も。 「だから、まぁ、なんだ。俺ら三年にとったら、ある意味で懐かしい状態だっていう話。嫌気は差すけど、それ以上はねぇよ。なにを言われようともされようとも、当人がぶれなきゃ、なんとでもなる」  返答に迷った行人に、篠原は「そういうもんなんだよ」と繰り返した。 「あいつみたいな、ひとりで生きていきますって言う顔をして、……実際にその通りを生きてる人間は」 「……そうですか」 「ま、万が一、見つけたら、俺にばっかり仕事任せんなって言っとけ」  軽口に、行人も努めて笑った。彼らが年上だからなのか。それとも、自分よりもずっと長い時間を一緒に過ごしてきたからなのか。茅野にしろ篠原にしろ、行人が心配する権利を与えてくれない。

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