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パーフェクト・ワールド・エンド17-1

[17]  俺は俺のままでいたい、という言葉は、自分でも驚くほど本心に近いものだった。  幼いころから自分を知る人間に言葉を尽くして説得されたとしても、自分の意見を曲げるつもりはなかったし、少なくとも卒業するまでこの学園に居残るのなら、その道以外の選択肢はないと思っていた。  それは事実だ。  だから、これで問題がない。理屈では分かっているし、事実、正しかったはずだ。それなのに、一向に調子が戻ってくれない。  こうなってしまうと、原因であるらしい「メンタルの問題」とやらを無視できなくなってしまう。  ――面倒なことになったな。  誰の所為とは言いたくもないが、事態の悪化速度が上がってしまった。そんな状態だと言うのに、学校に行くのは叶わなかった。  交渉の末、変更した薬がまだ身体に馴染んでいないのだろう。けれど、明日にはもう「普通」を取り繕うところまで自分を持って行ける。  経験上で見通しを立てることはできていて、だから行かなかった。こんなふうに昼間の寮にひとりでいるのもひさしぶりだった。  近頃は学校に姿を出しておかないとよろしくない事態を招きそうで、無理をせざるを得なかった。  ――まぁ、この状態で出て、目敏いやつに勘繰られるよりはマシか。  疑惑も周囲の視線も、明日の自分が跳ね除ければいいだけの話だ。そうやって強者の仮面を被ることには慣れている。  ただ、身体的な問題が深刻になれば、精神力や薬の力だけではどうにもならない日が来るのかもしれない。あと半年と少し。卒業までだけ持てばいいと思っていたけれど、それが可能なのかどうかが分からなくなった。  ――なぁ、成瀬。  ひとつだけ聞いてもいいか、と静かな声に問われたのは、金曜日の深夜のことだった。ごたごたと内部が煩かったあとでは外に行く気を削がれたのか、珍しいことに向原は寮に残っていた。  ほかに誰もいなかった談話室で遭遇したのは偶然だったかもしれないし、故意だったかもしれない。

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