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パーフェクト・ワールド・エンド17-2
昔は、よくこうして夜を過ごすことがあった。なにをするでも話すでもなくただ同じ空間にいた。
今になって思うと、よくそんなことをしていたとも思うが、中二から高一までは同室だったのだ。その延長線上で、一人部屋になったはずの去年も、ふたりでいることが多かった。
安心できる場所だったからだ。自分の大嫌いなはずのアルファだったのに、いつのまにか、唯一気の抜ける場所になっていた。
それも、過去の話ではあったけれど。
だから、成瀬もいつもの自分の仮面を張り付けたまま、「なに?」と問い直した。
いきなりやってきて迷惑をかけた自分の母親のことか。それとも唐突だったに違いない自分の発言のことか。
どちらにせよ、自分に応じない権利はない話だった。
「おまえ、俺に感謝してるって言ったよな」
「言ったな。思ってるよ、本当に」
間違いなく本音で、過去にも何度か言ったことのあるものだった。
「おまえがいなかったら、今のここはなかった」
自分ひとりの力ですべてを成し遂げたなんて思ってはいない。むしろ向原がいなかったら、なにも変わらなかったかもしれない。
本当に、そう思っている。だから、今こうなっているのも当然なのかもしれない、とも。
「じゃあ、おまえは今に満足してるのか」
「今って、本当の『今』?」
異分子が混ざる前の、気持ちの悪いほど平和だった状態なのか、それが是正されようとしている今なのか。
曖昧に誤魔化そうかとも考えたが、やめた。
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