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パーフェクト・ワールド・ハルⅧ-1
[8]
「あぁ、おまえが気にするようなことじゃない」
点呼の報告がてら茅野の部屋を訪れたのは、十時を少し過ぎた時間だった。昨日の演習中の出来事を謝った皓太に、茅野は椅子に座ったまま、あっさりと笑った。
「少しばかり楓には嫌味は言われたが、あいつら、今は虫の居所が悪いんだ。ミスコンの当てが外れたからな」
前日にバタバタと準備をするのは性に合わないとの茅野の仕切りで、櫻寮は昨日の夜でみささぎ祭の準備を終えている。今日の午後の最終チェックも問題なく済み、寮長の号令で全員が揃った夜の食堂は、和やかな雰囲気で閉幕した。あとはもう明日を待つばかりで、忙しなさも終わりを告げると言うのに、皓太の心境は少しも穏やかにならない。
――終われば、いつもの日常に戻って、いつもの自分に戻るのだろうか。こんな、苛々したりもせずに。
あれは、……いや、まぁ、榛名も悪かったとは思うけど。でも、それにしても、俺の八つ当たりも入っていたような気もするし。
「すみません。もう少し、俺が上手くやれたら良かったんですけど」
「確かにおまえは一年のフロア長だが、一年全体の責任を負う必要はないし、あいつの保護者でもなんでもないだろう」
「それはそうですけど」
「同室者が可愛いと苦労するな、おまえも」
仮に、榛名が可愛いだけだったらば、ここまで気苦労をかけられなかった、とも思う。あいつの場合、問題なのは、あの性格だ。猪かと言いたくなるような、アレ。
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