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パーフェクト・ワールド・ハルⅧ-4
「おまえは、アルファだろう。高藤。それも、成瀬や向原に近い、所謂、アルファの上位種と呼ばれる類の」
なんで、このタイミングで、この人から第二の性の話をされないといけないのか。反発するにはあまりに茅野の声は静かで、皓太は言葉を呑み込んだ。
「俺も、アルファだがな。正直、初めて成瀬や向原と逢った時は、敗北感に近いものを感じたな。これでも、この学園に入るまでは、俺の周囲には俺より優秀な人間はいなかったし、いないと思っていた」
「茅野さん、が?」
「なんだ。俺がそんなことを思っていたのは意外か? 嫉妬くらいするさ。当たり前にな。おまえやあいつらは上位種かと勘繰りもする。口に出すかどうかは、……それこそ、性格や倫理観に寄るだろうが。誰でも内面ではそんなものだろう」
皓太の反応に苦笑して、茅野が言葉を継いだ。
「そう言う意味では、おまえは真っ当で、……だが、それも、ある意味で、おまえが特別だからだ」
「そんなこと……」
ないとはさすがに言えなかった。自分がアルファであることは事実だ。アルファに生まれた時点で、恵まれていると言われれば、否定することは出来ない。
「誰にも負けない、劣等感を持たないと言う一点に置いて。持つ人間は嫉妬をしない。嫉妬をするのも、画策するのも、持たない人間だ」
もし。もしも、仮に。俺が持っていて、榛名が持っていないとして。アルファとベータで、性の壁があるとして。何の違いがあるのだろうと思っていたかった。同じ部屋で同じ時を過ごして、同じ日々を歩んできた。この学園で。
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