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パーフェクト・ワールド・ハルⅧ-6
「いや、悪いことではないとは思う。本当に。あいつの言うそれは正論だ。だが、今までの価値観との相違は甚だしいだろう。いくら第二の性は秘匿と言われたところで、アルファはちやほやされて育ってきているし、ベータは、……特にこの学園に来るようなベータは、アルファに劣等感を持っている人間が多い」
他のベータよりずっと優秀で、けれどどうしたって、アルファではないと言う性差の壁を越えられない、ベータ。
「そんなことは関係ないと言われても夢物語だ。けれど、成瀬の手の届く範囲内でだけは、その夢物語が成功して確立されていたんだ。ある一時」
やっぱり、笑えない。皓太は小さく息を吐いた。
「それが俺たちなんですか」
「特に、中等部の時、成瀬と同じ寮だったおまえたち、だな」
「今はさすがに、あいつも声を大にして、それを言うつもりはないだろう。理想として持っているかもしれんが」
初めて家を離れるのは不安だと思うけど。大丈夫だよ、怖い先輩もいないし。自由な場所だから、六年間、楽しんだら良いよ。中等部に入学する少し前。珍しく実家に戻ってきていたあの人が言ったことだ。理想の、――楽園。この場所を、あの人は本当にそんな風に思っていたのだろうか。
「そして、――あいつの色が消えかけたかと思えば、今度はある意味であいつの色を一番色濃く受け継いでいるおまえがトップに立った」
その言葉に、落ちていた視線が上がる。その先で、茅野は静かに笑っていた。
「つまり、そう言うことだ」
「そう言う、ことって」
「あいつの中等部に入ってすぐのころのあだ名教えてやろうか?」
言葉に詰まった皓太に、茅野が笑顔のまま続けた。
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