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パーフェクト・ワールド・ハルⅧ-11

 自室の扉をそっと開けると、まだ電気が点いていた。おそらく自分のため、だ。榛名は上手く行っているかどうかはさて置いて、案外、気を使っている。 「悪い、遅くなった」  声をかければ、曖昧な応えが榛名のベッドから聞こえた。目元を掌で押さえたまま、仰向けに転がっている。 「また頭痛?」 「偏頭痛持ちじゃないおまえには、絶対にこの辛さは分からない」  呪詛のごとく鬱々としたそれに、皓太は気がつかれないように笑った。昔みたいに理由も言わないで難しい顔で黙り込まれるよりは遥かにマシだ。  なんで俺、こんなに嫌われているのだろう、と。気を揉んでいた日々が懐かしい。 「薬、飲んだら良いのに。ちょっとはマシになるんじゃないの?」 「どんな薬でも、飲み続けるのは良いことじゃねぇよ」  わずかな沈黙のあと、返ってきた答えに、そんなものなのだろうか、と皓太は思った。昔から身体は丈夫だったから、服薬の経験はほとんどない。 「最近、忙しかったもんな。明日でそれも終わるし、ゆっくりしろよ」  光量を絞りながら労わると、「おまえもだろ」と、どこか拗ねたような声が飛んできて。  ――こいつ、ここまで来て、まだ本番を見るのが嫌なのか? 「張り切って応援してあげれば良いじゃん。拗ねてないで。どうせ明日なんだし、その方が喜ぶと思うけど」 「なんの話……って、あぁ、それか。そういや茅野さんにも似たようなこと、言われた」  違ったのだろうかと榛名の方に視線を向ける。薄暗がりの中でも、口元が微笑んでいるのが分かった。

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