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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-4
午前中のミニ運動会が終わると、午後からはいわゆる「学園祭」の色が強くなる。来場者も午前中の比ではなく一挙に増え、普段は紺色一色の学園が華やかな色が溢れ返っている。警備の腕章を付けて巡回しているだけで、陵女学院の制服姿の少女たちに何度も行く手を阻まれてしまって。その度にげんなりとしていた榛名が、少女たちの波が引くなり溜息を吐いた。
「ったく、おまえといると碌なことねぇな。なんだ、あの高い声。頭にキンキンくる」
「俺だけの所為でもないと思うんだけど」
むしろ、あの子たちは陵学園の在校生であれば誰でも良いのではないだろうか。その証拠に、あっと言う間に次のターゲットに移動している。同じく巡回中の風紀委員を囲んでいるのを視線で指せば、榛名が半目になった。
「リレー早かったですね、とか言われてたじゃん。おまえって認識して話しかけに来てんだろ」
「いや、……」
そもそも論で言えば、あれは好きで早かったわけでもない。ともすれば楓寮の走者が突っ込んできそうで、予想外に本気で走ってしまっただけだったのだが、黙っておくことにした。
気が付いていないなら良いが、競技中の至る所で小さな故意を確認したのは事実だ。幸い、どれも大事には至っていなかったが、茅野は楓寮の寮長に抗議に行っていたようだった。
――ただの人気投票、と思っていたかったけどな。
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