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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-8
「なんだ、おまえたちか」
「誰か探してたんですか?」
櫻寮の本部テントに顔を出した途端である。勢いよく振り向いた茅野にあからさまに落胆されて、皓太は半ば以上義務感で口を開いた。
「成瀬だ、成瀬」
「成瀬さん?」
道中ずっと黙り込んでいたくせに、出てきた名前に榛名が、いの一番に反応する。
それにほっとすると同時に、言葉にしたくない苛立ちを覚えてしまって。事実を打ち消すように、皓太は話を継いだ。
「そろそろ準備しないと駄目な時間になってます?」
「だから探しているんだけどな。このクソ忙しい時に、あいつはどこに行ってるんだ。見回りの時に見なかったか?」
「いや、見てないですけど。生徒会じゃないんですか?」
「生徒会は今日一日、向原が一括で面倒を見ている。成瀬が顔を出す必要はないはずなんだが」
呆れ声で茅野が首に手を当てた。学内は、基本的に携帯電話持ち込み不可だ。放送をかけるつもりはないだろうから、そうなれば人力で探すしかないのは皓太にも分かるし、茅野が気に病むのも分かる。それは、分かるのだけれど、だ。
「そもそもとして、向原に判断が出来ないようなことが起こるはずもない。まったく、あいつはどこで油を売っているんだ」
――おまえがそんな顔して、心配しなくても良いだろ。
刺さりそうな榛名の視線に根負けして、皓太は「分かりました」と請け負った。どうせ、そのうち戻ってくるに決まっているのに、との溜息は押し隠して。
「俺、ちょっと空いているんで、見回りがてら探してみますよ。榛名は開票があるし、茅野さんが出て入れ違いになっても面倒でしょう」
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