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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-9

 待っていましたと言わんばかりに、「校舎の方を頼む。他は手は足りているんだ」と茅野に告げられ、ほら見たことかと唸ったのは、榛名に対してである。  だから、良いように茅野さんは人手を使いたかっただけで、何の問題もないし、大ごとになるわけもないんだって。この学内であの人の手に負えないような何かが起こるわけもないし、たとえ起こったとしても、おまえじゃあるまいし、なんとでもするに決まっている、と。  面倒事を押し付けられた故、と言うよりかは盲目的な同室者への不満を胸中で転がしながら、皓太は校舎へと足を向けた。みささぎ祭の開催中は校内への立ち入りは原則禁止なので、来場者の姿も制服姿も近づくにつれ減っていく。  どうせ、時間まで人の少ないところでさぼっているだけだ。意外と成瀬は人の多いところが嫌いだと皓太は知っている。  あるいは、すぐに誰かに捕まってしまうから、煩わしいだけなのかもしれないけれど。  以前に一度見かけたことのある二号棟の裏手に行く先を決めて、皓太は足を速めた。少し奥まっていることもあって、いつもほとんど人はいない。角を曲がろうとしたところで、小さく声が聞こえた。 「相変わらず、やることがえげつないな、櫻寮は」  探していた当人の、犬猿と言って差し支えないだろう風紀委員長の声。  嫌な場面に出くわしたなぁと思いながらも皓太は足音を潜めて、顔を覗かせた。  視線の先で、校舎の壁を背にした成瀬と本尾とが相対している。幸か不幸か自分の存在に気が付いた素振りは二人とも見せていない。出ていくにも出て行けず、皓太は諦めて気配を隠した。

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