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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-10

「可哀そうに。泣いてたんだろ? あの新入生。楓寮の連中も相当、頭に血が上ってるんじゃないのか」 「少なくとも、おまえのところには迷惑はかけてないつもりだけど?」 「まぁ、柊にはそうだな。ただ、学内で揉め事を起こされると、全部、風紀に後始末が回ってくることは知ってるよな、会長」 「茅野が上手くおさめる。それこそいつものことだろう。それともなんだ? おまえも水城に興味があるのか」  挑発するように笑った成瀬に、本尾も笑った。お互い直接手を出すようなことをするはずがないと分かっていても、見ている自分の胃が痛くなりそうで、皓太はそっと眉をひそめた。 「まさか。……あぁ、でもそうだな。水城だったら、まだ、おまえの方が、興味はあるな」  試すように本尾の手が伸びる。その指先が頬にかかっても、成瀬は微動だにしなかった。 「水城だったら、触っただけで折れそうだろ? その点、おまえなら問題ない」 「そうじゃねぇだろ、本尾」  そこでふっと成瀬が微笑った。本尾の手を振り払おうともせず、腕を組んだまま。 「俺に、だったら、向原がおまえを見てくれるからだろ?」  場が凍ったと思ったのは、きっと自分の気の所為ではない。出て行くべきだろうかと逡巡仕掛けた先で、追い打ちをかけるように成瀬が言い放った。

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