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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-12

「ところで、向原さんは知ってるんですか、これ」 「なんで、あいつが出て来るんだよ、そこで」  自分に対するにしては珍しい嫌そうな声音に、地雷を踏んだことを悟る。けれど、今更と言えば今更で。 「なんでもなにも。もともとが向原さんの所為で絡まれているんじゃないですか」  この人の言い方を踏むならば、向原さんに構って貰いたいが為だけに、この人の方に流れてきていると言うことだ。なんとなく分かるような気もするが、この人たちの関係は言葉にし難い。 「俺に降りかかった以上、俺の問題だ。だから、気にしなくて良い」  ――まぁ、そう言うだろうとは、思っていたけれど。  先ほどとは違う溜息を噛み殺して、成瀬を見上げた。昔に比べれば身長差は縮まってきているけれど、まだ追いつけない。視線の先で、小さく成瀬が笑った。内緒話をするかのように。 「言うなよ、向原に」 「分かってますって」  成瀬さんが、どんなやり方で本尾を煙に巻いていたかは。  頷いた皓太に、何事もなかったかのように彼が話を変えた。

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