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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-13

「茅野に頼まれた?」 「どこで油を売ってるんだって、気は揉んでましたよ」 「じゃあ、早く戻らないと怒られるな」 「成瀬さん」  いつもの顔で応じて戻ろうとした彼を、何故か皓太は呼び止めてしまっていた。 「どうした?」  求めに応じて足を止めた成瀬の顏には微かに困惑が滲んでいた。当たり前だ。急げと呼びに来たのは自分だ。だから、これはただの衝動だったのだと思う。あるいは、結果が出る前の不安、だったのかもしれない。 「あの、祥くん」  呼び方を変えたのは、彼が正直に答えてくれるのではないかと思ったからだ。陵学園の生徒会長としてではなく、幼馴染みの成瀬祥平として。 「祥くんは、今のこの学園をどう思ってる? 水城が入学してきたことで何かが変わると思う?」 「向原……は、おまえにそんなこと言わないな。篠原? 茅野?」  直球だった問いかけに、弱ったような笑顔が浮かぶ。出てきた名前に明確な答えは返さなかったのに、正解は伝わったらしい。 「どっちもか。仕方ないな、あいつらは。篠原はお節介だし、茅野は頑固だからなぁ。……ここを大事に思っていて、皓太に期待しているんだろうけど」  苦笑めいた声は優しい。学内で聞くものよりも、ずっと。

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