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パーフェクト・ワールド・ハルⅨ-15

「そうだな。たぶん、そうなんだと思う。だから、もし皓太のそれが俺と同じ方向性のものなら、何も心配しなくて良いんだ、本当に」 「祥くんが、なんとでもしてみせるって?」  口を突いて出たのは、どこか刺々しいものだった。けれど、成瀬は変わらなかった。 「俺がいる間くらいは、そう出来れば良いとは思ってるよ」  あいつは、なんだかんだと言って理想論者だから。そう言った茅野の声が不意に脳裏に過った。そして、そのとき、知っていると思った自分の声も。  うん、と頷くこと以外、出来なかった。  祈りに似ている、と思った。篠原や茅野が言うそれが、現状を打破して見せろと言う発破だとすれば、成瀬のそれはどこか宙に浮いている。叶うわけがないじゃないかと切り捨ててしまえば簡単なのに、彼がそれを腕のなかで叶えてしまう。  あぁ、だから、ここは、この人の国で、この人が王なのか。  大丈夫だよ、と続いた声が無性に優しく響いて、今ここで、今日が終われば良いのにと詮無いことを思った。  そうすれば、何も変わらない「ここ」が残る。これからも続いていく。けれど、現状が続くであれ、きっと変わってしまうのだ。あの結果は。  いつまでも王は絶対無敵ではない。それは歴史が証明していて、その予兆は、今、この国に満ちている。

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