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パーフェクト・ワールド・ハルxx-2
――そんなこと、気にするようなことじゃないのに。
むしろ、距離があることが、安心であるはずなのに。
和やかな場にそぐわない顔になっているように思えて、行人は吐きたくなった溜息を呑み込んだ。
少し外そうと中庭に抜け出すことに決めて、行人はひっそりと輪から外れた。食堂から直結しているガラス戸を閉めると、はしゃぐ声が遠のいて、夜の風が耳朶を擦っていった。
昼間は暑いくらいだったのに、今はほのかに肌寒い。
中抜けしたことに気が付かれない程度には早く戻ろう、と。中庭をぐるりと見回した先で、木の近くに誰かが立っていたことに気が付いた。
同じようなことを考えていたのは、自分だけではなかったらしい。
先客の邪魔をしないようにと、来たばかりの足を返そうとした瞬間。意外な声で名前を呼ばれた。
「行人」
「成瀬さん?」
つい先ほどまで茅野たちと一緒に場の中心にいたと思ったのに。
「良いんですか、中にいなくて」
「そう言う行人こそ」
笑顔に誘われるまま近づいた先で、そう切り返されて、行人は言葉に詰まった。そして誤魔化すように口を開く。
「俺はいてもいなくても、……でも、成瀬さんは、その」
みんな、話しかけたいだろうし。思いがけず二人きりになれて嬉しかったのは事実だけれど。
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