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パーフェクト・ワールド・ハルxx-3

「今日だけだよ。それに、ちょっと疲れたかな。茅野は元気が有り余ってるみたいだけど」  あいつの元気はどこから出てくるんだろうなぁと苦笑いの成瀬に、行人も笑った。櫻寮の優勝だ、と高笑いが止まらない様子だった寮長の姿が自然と脳裏に浮かぶ。 「だから、ちょっと休憩。行人と一緒」 「……ですね」  優しい微笑に、肩からふっと力が抜けた。 「楽しいけどな、こう言うのも。たまにのことだし」 「成瀬さん」 「ん?」 「高藤、怒ってると思います?」  柔らかな声に押されるように、つい、そんなことを聞いてしまった。  怒っている、のだろうか。それともそうですらないのだろうか。言葉にした瞬間から、また曖昧になっていく。 「怒ってるって、皓太が? だとして、誰に? ……行人?」  意外そうに彼が眉を上げる。それから行人の不安を取り除くようにいつもの顔で微笑んだ。 「うーん、どうだろうな。良くも悪くも皓太は感情を制御するのが上手いから、昔からあんまり怒らなかったよ、俺に対しても」 「それは成瀬さんに怒るようなことがないからじゃ」 「まさか。皓太は俺の駄目なところも嫌なところも十分知ってると思うけどなぁ。どちらかと言うと、怒るを通り越して呆れてるところもあるんじゃないかな」 「まさか」  図らずしも同じ言葉を返した行人に、成瀬が小さく笑った。 「まぁ、でも。そのある意味で分かりにくい皓太を、怒ってると思うと言うことは、行人はちゃんと皓太を見てるんだろうな」  微笑ましいものを見るような瞳に、行人は飛び出しかけた言葉を呑み込んだ。  でも、だって。  俺がそれを分かったところで。高藤は望んでいないのかもしれない。あるいは、俺がいつのまにか甘えて踏み込み過ぎたのかもしれない。そして、高藤は嫌気が差したのかもしれない、なんて。言えるわけがなかった。 「気になるんだったら、聞いておいで。行人には怒ってないと思うよ。あれはどちらかと言うと、……、いや、俺が言うことでもないな。ほら」  成瀬の視線を辿ると、明るい窓の先だった。 「こっちを気にしてるから」

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