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パーフェクト・ワールド・ハルxx-6
「榛名にとってのさ」
「え?」
「ここって、なに?」
不意に展開した抽象的なそれに、行人は思わず隣を振り仰いだ。行人の視線に応じる形で、高藤が眉を下げる。
「あー、ええと、なんと言うか……、そうだな。陵学園自体でも良いし、櫻寮のことでも良いし。好き?」
学祭終了後のアンケートみたいだなと思ったが、先ほどのものよりずっと答えやすいのは確かで。
「そうだな」と、行人はゆっくり口を開いた。
寮長が茅野で良かったと思うし、また成瀬と同じ寮に配属されたことも本当に嬉しい。
萩原に話しかけてもらえることも実は嬉しいし、四谷の知らなかった一面を見ることができたことも良かったと思う。
それに、――。
「好きだよ、ここ。おまえと一緒でほっとした」
「そう、なんだ」
「うん。まぁ、そりゃ、嫌なところがあるのも、目に付くところがあるのもお互い様だと思うんだけどさ、おまえじゃなかったら、きっともっとしんどかったに違いなくて。それは間違いないから」
本当はまた同じ寮だと知って、同室者が高藤で嬉しかった。それは自分の第二の性をこのまま隠すにあたって、新たな誰かになるよりもリスクが少ないだとか。そう言った打算的な意味合いだけではなくて。また同じ場所で三年間一緒に過ごせることになって、嬉しかった。言わないけれど。絶対に、言えないけれど。
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