134 / 1144
パーフェクト・ワールド・ハルxx-7
「なんか、それ、すげぇ消去法じゃねぇ?」
行人を見下ろしていた高藤の瞳がふっと笑んだ。
久しぶりに見たなと思った。最近ずっとピリピリしていて、どこか自分を扱いかねていたようだった同室者の素直な顔。
大丈夫、怒ってないよ。気になるなら聞いてみたら良いよ。
諭す調子の成瀬の声が蘇る。そしてあぁと得心した。
本当だ。聞く必要なんてない。この顔を見れば、それで十分で。
――幼馴染みだから、分かるのかな。
それとも彼だから、分かるのだろうか。自分もいつか分かるようになるのだろうか。
「そうか。でも、なら良かった」
最近の迷いを打ち消すような、あるいは、言い聞かせるようだった調子ではなく、すっきりとした声で応じて、高藤が笑った。その柔らかな表情に、なぜかどきりとして、――久しぶりに見たからだと言い聞かせる。
「俺も、好きだよ。この学園が」
それがまるで、自分を好きだとでも言うように聞こえた、だなんて。絶対に誰にも言えないと思いながら。行人は意識してゆっくりと瞳を瞬かせた。
ともだちにシェアしよう!