457 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンド17-6
成瀬の答えを待とうともしないまま、向原は立ち上がった。そしてそのまま背を向ける。
「まぁ、おまえはそうじゃないんだろうけどな」
最後に吐き捨てられた台詞を、反芻できたのはひとりになってからだった。
「そんなの、おまえだから言える台詞だろ」
堪え切れなった非難が、ひとりきりの空間に響く。苛立ちと焦燥と、そして得も言われぬ罪悪感。
持っている人間は羨まない。蔑まない。オメガでもアルファでもどうとでもいいと心の底から思えるのは、向原がアルファだからだ。
だから、自分とは相いれない。
絶対に、相いれることはない。何度目になるのか知れないことを、成瀬は言い聞かせた。
――おまえが秘密を守ることができるあいだは、俺も秘密にしておいてやるよ。
そう、あの男が言ったのは、ただの気まぐれだったと成瀬は思っているし、おそらく実際にそうだっただろうと思う。
お互いに予想外があったとしたら、その気まぐれが、ここまで長く続いているということだけだ。
それも、もう終わるのだろうけれど。
ともだちにシェアしよう!