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パーフェクト・ワールド・エンド17-7

「重役出勤だな、会長」  櫻寮を出たところで出くわした茅野が、制服姿の成瀬にわずかに驚いた顔をして、それから眉を顰めた。 「調子が悪いなら素直に休めばいいだろう。生徒会の仕事も、べつに向原……、あぁ、いや篠原がなんとでもしてくれるんじゃないのか」 「それはまぁそうだけど。あいつなんだかんだで勝手に俺の印は捺さないから。溜まるんだよ、決裁」 「あぁ」  向原だったら勝手にやったんだろうなという顔で頷いた茅野に、そういうことといつもの調子で成瀬も笑った。 「茅野は?」 「いくらおまえでもな、一応、寮生がひとり残っていたら、昼休みくらい顔を出してやろうかという気になるんだ。俺は優しい寮長様だからな」 「そっか、ごめん」 「なんなんだ、気持ち悪いくらい素直だな。やっぱり熱でもあるんじゃないか、おまえ」  学舎のほうに向かって歩き出した成瀬に合わせて踵を返した茅野が、訝しむように顔色を覗き込む。 「あるように見えるか?」 「見えん。だが、隠すのが抜群にうまいからな、おまえは」  苦笑で応じて、成瀬は話を変えた。

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