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パーフェクト・ワールド・エンド17-11

 自分のなかに、こんな強烈な飢餓が眠っているなんて、知らなかった。  自分では制御できないようなところで、心が騒めいていた。そこに感情が灯っているのかとはじめて認知したかのように、忙しなく動いている。  ――恋をしてはいけないよ。  ――もしきみが、きみの言うところのアルファであり続けたいのならね。  いまさらどうにもならない言葉が身体中を駆け巡っていく。もう遅いと笑いたくなった。ずっと言われていたことだ。当たり前に起こりうることだと諭され続けていたことだ。  けれど、自分には関係のないことだと思っていた。ほかの誰に起こっても、自分には生じえないと思い込んでいた。  ドクンと嫌なふうに心臓が鳴ったような気がして、手のひらを握り締める。まずいということだけは理解できた。  これ以上、この場所にいるわけにはいかない。これ以上、感情を乱されるようなものを見てはならない。  気配を殺したまま、足を踏み出す。最後の意地だとしか言いようがなかった。  不完全だと知っているから、見せかけだけでも完璧でありたい。みっともない自分を見せたくない。とりわけ、あの男にだけは絶対に。  対等でありたいと唯一のように願っていた相手には、絶対。弱みを見せて甘えるようなことをしたくはなかった。

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